吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ハックル

 まったく台詞のない、ストーリーもない物語。ハックル(しゃっくり)をしているお爺さんが主人公(?)だけど、いったい何を言いたいのかさっぱりわからない。といいつつ、映像へのこだわりには思わずうなってしまう、すごい作品。体調の悪いときに見たら10分以内に爆睡しますが、ちゃんと見ていたらなかなかの作り込みに驚いてしまう。空撮から接写まで、カメラは自由自在に動き、のどかな田園をドキュメンタリータッチのカメラが舐めたかと思えばいきなりCGで作り込んだシーンがが沸いて出てくる(沸いて出てくる、という唐突さです)。ほとんどの観客が寝そうになった瞬間に「どきっ」とさせるショットを挟んで覚醒させる。


 舞台となった農村ののどかさといい、豚のお尻といい、養蜂家と蜂の戦いというか共生というか、いろんな場面が超拡大されて映し出される様はまるでNHKスペシャルハンガリーの田園、その接写一日」。ドキュメンタリーなのかなぁと思うが、実はストーリーがあって(いや、ない)、溺死体が出てきたり猫が変死したり、妙なことは陸続と起きる。


 変な映画を見たい人にはお奨め。しかしこんな映画を劇場公開していたんですねぇ。全然儲からなかっただろうなぁ。観客の半数以上が寝たと思います。でも寝ずに全部見た人はきっと大きな感動(感嘆)を得たと思える、それほど不思議な魅力とこだわりに満ちた映画。(レンタルDVD)

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ハックル
HUKKLE
ハンガリー、2002年、上映時間 76分
監督・脚本: パールフィ・ジョル、撮影: ポハールノク・ゲルゲイ
出演: バンディ・フェレンツ、ラーツ・ヨージェフネー、ファルカシュ・ヨーゼフ、ナジ・フェレンツ