吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

Π(パイ)

 この映画を見ると頭が痛くなる。いえ、比喩じゃなくて、ほんとに痛くてたまらなくて、途中何度も寝てしまった。わたしは頭痛持ちで、最近こそかなりよくなったけれど、十代の頃は我慢できない頭痛に毎日毎日悩まされていた。だから、この映画の主人公である数学者が頭痛にのたうつ様子が他人事とは思えず、そして実際に痛い頭を抱えながら見ていたわけだが、そういうときって頭を錐(キリ)で刺し貫きたくなる。頭痛の渦中にいるときはいつも錐で自分の頭をキリキリと刺してフランケンシュタイン状態になっている妄想にとりつかれたものだ。この映画ではまさにどんぴしゃの場面が出てくるので、「うわぁ、わかるわ、その気持ちっ」と異様な興奮と安堵感に包まれたのであった。

 モノクロの、精度の低いざらざらとした映像といい、妄想と現実の区別がつかない場面といい、実にシュールで心地よい。あ、いえ、頭が痛い。頭痛持ちには「うわあ、よくぞ作ってくれました、この映像。よく解るわぁ〜」という頭痛い痛いたまらんもうやめてけれでもつい見てしまうああやっぱり頭痛いもういや、あ、でもやっぱりつい見てしまう。という映画でありました。

 謎の数字、216桁の数字。これが株価の乱高下を生んだり、ユダヤ教の秘密をといたり、なんだか世界征服のためには絶対必要な数字みたいで。とにかく「博士の愛した数式」みたいにやたら数字の話が出てきます。しかし、これは要するに、数字が世界の全てを説明できるんだという万能感にとりつかれた男の妄想なのである。そして、その妄想にとりつかれたばかりに男は犯罪に巻き込まれ、痛い思いをし、挙げ句の果ては自分の頭をぎりぎりと破壊して…という可哀想な目に遭います。

 で、この映画の教訓は何かというと、「世界征服なんて企むのはやめなさい」ということにつきますね。つまり、世界をたった一つの原理で説明できるなどという妄想にかられるのはやめたほうがいい、ということ。マルクス主義しかり、「自由主義経済」という名のもとに過剰な競争を強いる原則しかり。たった一つのイデオロギーが世界の全てを語り尽くし覆い尽くすなどということはもやは21世紀の世界にはありえないのだ。そこから自由にならなければわたしたちは追いつめられ頭に激痛が走り破壊されてしまうのである。

 というお話でした。あー、頭痛い。(レンタルDVD)

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アメリカ、1997年、上映時間 85分
監督・脚本: ダーレン・アロノフスキー、製作: エリック・ワトソン、作曲: クリント・マンセル、音楽監督: スーZ
出演: ショーン・ガレット、マーク・マーゴリス、スティーヴン・パールマン、ベン・シェンクマン
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