吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

女王フアナ

15世紀末、大航海時代のスペイン。スペインを統一した女王イサベルの16歳になる娘フアナ王女は、政略結婚のためハプスブルク家へと嫁いだ。フアナは美しい夫フェリペにたちまち夢中になる。当初、夫婦仲もよく、次々に子どもも産まれたが、やがてフェリペは浮気を繰り返すようになり、フアナは激しい嫉妬にかられる日々を過ごす。
 そんなある日、イサベル女王が崩御し、フェリペとフアナは王位に就くためにスペインへやって来る。スペインでもフェリペは浮気を繰り返し、特にお気に入りのムーア人女性を堂々と宮廷に入れて囲うようになると、フアナの嫉妬と錯乱は頂点に達した。王政を顧みず、謁見の場ですら取り乱す女王フアナを貴族たちは「狂女」だと決めつけ、彼女を幽閉することに……

 フアナを演じたビラール・ロペス・デ・アジャラが初々しく美しい。嫉妬に狂い泣き喚く若き女王を熱演しているが、フアナがなぜ深く深くフェリペを愛することができるのかがわかりにくい。彼女のフェリペへの愛が丁寧に描かれていなくて、ただただ嫉妬に狂う場面ばかり登場するから、「あんな女じゃ、いやだよなぁ、誰だって」と思ってしまう。女王としての誇りはないのんかい! とイライラしてしまうから、どうにも可哀想な女王に感情移入できないのだ。

 フアナは結局半世紀近くも塔に幽閉されるのだが、映画では幽閉されてからがまったく描かれていないのと、どういうわけか国王夫妻の子どもが登場しないので、愛憎劇としては薄い薄いものになってしまっている。無理に上映時間を二時間以内に押し込めなくてもよかったんじゃなかろうか。
 また、当時のスペイン宮廷の政治劇という側面からも描写が物足りない。特に日本人はスペイン中世史なんてなじみが薄いから、とってもわかりにくかろう。イベリア半島はいくつもの国に分かれてしじゅう戦争していたし、ヨーロッパ各国の王室と政略結婚を繰り返していたのだが、そういった歴史を知らずに見るとわかりにくい。その点わたしは青池保子の漫画『アルカサル』でばっちり勉強済みだもんね。

 ところで、この作品には伯爵役でジュリアーノ・ジェンマが出演していた! あ、気づかなかったわ。なんという久しぶりのご登場。

 恋愛ドラマとしても薄いし政治史としてはもっと薄いけど、絢爛たる美術や衣装を見ているだけで楽しいわたしとしましては、合格点。(レンタルDVD)

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JUANA LA LOCA
制作年 : 2001
上映時間:117分
制作国:スペイン、イタリア、ポルトガル
監督・脚本: ヴィセンテ・アランダ、製作: エンリケ・セレッソ、音楽: ホセ・ニエト 
出演: ピラール・ロペス・デ・アジャラ、ダニエレ・リオッティ、マニュエラ・アーキュリ、エロイ・アソリン、ロサナ・パストールジュリアーノ・ジェンマ