吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

はじめてのおもてなし

ドイツには「グッバイ・レーニン」(2003年)のような、傑作政治コメディがある。本作もその一つ。ミュンヘンに住む裕福なインテリ一家がある日、アフリカ難民を家に受け入れることになることから始まるドタバタコメディであり、難民問題のみならず、家族の…

ライフ

宇宙飛行士というのは極めて知性が高い人々が就く職業だ。大昔、まだ10歳ぐらいだったころのわたしは、宇宙飛行士はある程度運動神経さえよければ誰でもなれると思っていた。大人になってそれは大間違いであることがわかったのだが、この映画を観ると改めて…

アラビアの女王 愛と宿命の日々

「アラビアのロレンス」を二回りぐらい小さくしたような映画。 最後まで見終わってもう一度巻頭のシーンに戻れば、それが何を意味するのかがよくわかる。巻頭のシーンに登場する人物は、チャーチル、T.E.ロレンス、イギリス領事。。。彼らは第一次世界大戦後…

ラスト・フェイス

劇場未公開なのでむべなるかな、というようなわかりにくい作品。キャスト・スタッフともに有名人をそろえているのに、結局劇場では見られないのかな。 国境なき医師団から分派した「世界の医療団」に所属する二人の医師の壮絶な活動と愛を語る物語。おそらく…

武士の献立

テレビ放映を意識したのか予定調和の美しい話で、大人向けの色っぽい場面もなくお茶の間の一家団欒に相応しい映画だ。だからお話もスイスイ進むし、ひっかかるところがさしてないのだが、何といっても画面に映し出される料理がおいしそうで、また「包丁侍」…

ショコラ ~君がいて、僕がいる~

オマール・シーは際物、もしくは異色俳優として色物扱いされる恐れがあり、実際その瀬戸際の気がするが、本作でもそういう役をもらっている。 今回オマール・シーが演じるのはフランス初の黒人コメディアン、ショコラの役。舞台は20世紀初めのサーカスのテン…

カエル少年失踪殺人事件

カエルを取りに行くと言って山に入ったまま行方不明になった5人の小学生たちの行方を捜すミステリー。1991年に起きた実際の事件を元に作られている。事件そのものは迷宮入りしたが、映画では犯人に迫るのはMBS放送の演出家だ。 どこまでが事実でどこからが想…

ダンシング・ベートーヴェン

漫然と聴いていると気が付かないが、楽譜を見ながらベートーヴェンの第九交響曲第四楽章を歌ってみると、この曲がいかに緻密に練り上げられているか、その事実を実感して圧倒される。大オーケストラに四部合唱、さらに四声独唱を加えた、完璧な交響曲。これ…

トランボ  ハリウッドに最も嫌われた男

これは出色の出来。よくできたドキュメンタリーとも言える、面白く可笑しく実話を描いたドラマだ。 本作はダルトン・トランボという一人の天才脚本家の半生記である。その破天荒ぶりが半端ないので、見ていて痛快愉快この上ない。天才とはこういう人物のこと…

草原の実験

これは劇場の大スクリーンで見るべき映画であって、自宅のテレビモニターで見るなんて許されない。ましてや、わたしみたいにiPadで見たなんていうのはもうとんでもない話! いやー、これは本当に大きなスクリーンでみたかったわ。 そもそも、この映画はセリ…

はじまりの街

DV夫から逃れて新生活を始めた中年女性とその13歳の息子が、周囲の人々に支えられて確かな一歩を踏み出すまでの物語。 ローマから北イタリアのトリノへと、学生時代からの友人をたよってやってきたのはアンナとその一人息子のヴァレリオ。独身で気ままに暮…

ソウルステーション/パンデミック

韓国のアニメは初めて見た。そして、これは怖い。特にラストのどんでん返しが怖い。 ヒットしていた実写「新感染」はとうとう見逃してしまったが、このアニメがその前日譚というので興味をそそられた。舞台は深夜のソウル駅。一人のホームレス老人から感染が…

ナチスの犬

劇場未公開作。 これはおそらく実話を基にしているのだと思う、ナチスと対峙した市井の人の物語。ナチス占領下のオランダで、ドイツ系ユダヤ人の劇場支配人ズスキントは占領軍の将校に取り入ってご機嫌を取り結び、特別視してもらっていた。その見返りに彼は…

三度目の殺人

見終わったあとすっきり爽やか、といかないところが本作の魅力なのか欠点なのか。もやもやしたまま終わってしまった謎の作品。是枝監督自身が「神の目線を持たない法廷劇」と言っているように、殺人事件の真相は観客に委ねられる。 三度目の殺人とは、三隅(…

映画深夜食堂

この人情物語よいねー。テレビドラマで好評だったので劇場版ができたということだが、テレビの作品ではなく劇場オリジナルのオムニバス映画である。登場人物のことは観客がある程度知っているという前提でお話が進むが、テレビ版を見ていなくてもだいたいは…

ワルキューレ

最後のヒトラー暗殺計画。もちろん失敗したことは歴史の事実だから誰もが結末を知っているのに、緊迫感が漂うよい演出だ。ただし、なぜか俳優がイギリス人だらけで、アメリカ人トム・クルーズがドイツの貴族将校というのは解せない。写真を見たところ、確か…

エージェント・マロリー

なんといっても豪華な出演者の顔ぶれを見よ! 主役がほぼ無名の女優だけに、脇がこれだけ派手だと客も呼べます。女子総合格闘技のチャンピオン、ジーナ・カラーノがヒロインで、彼女は強いだけではなく美しい容姿でなかなかに魅せます。アクションはもちろん…

技術者たち

やくざの上手を行く金庫破りの詐欺集団の愉快痛快な犯罪サスペンス! ちょっと「オーシャンズ11」みたいな感じもあるけれど、主役に華がないのが難点。むしろ、やくざ社長の手下の冷酷なヒットマン役を演じたイム・ジュファンがとってもイケメンでかっこよく…

ブレードランナー 2049

レプリカントとして差別される者の悲哀が全編を覆う。ラストシーンの切なさは特筆もの。心に残るSFアクション映画がまた一つ誕生した。 前作では2019年のロサンジェルスは退廃した街だった。今作2049年ではもう退廃を通り越えて荒廃しきっている。そこに暮ら…

キング・アーサー

有名な「アーサー王と円卓の騎士」の伝説もガイ・リッチーにかかるとこんなにスタイリッシュでスピーディな面白い映画になるのね。これは驚きです。展開が速すぎてついていけない点もあるけれど、豪華な役者陣といい、一見の価値あり。なんといってもわれら…

インビジブル・ゲスト 悪魔の証明

これはすごい。誰でも騙されます。 密室殺人の犯人として起訴された若き実業家ドリアは、圧倒的に不利な状況から奇跡のように無罪を勝ち取れるという常勝弁護士を雇うことになった。彼女の名はグッドマン。ベテランのグッドマンはあと3時間で証人尋問が始ま…

50年後のボクたちは

14歳のひと夏の暴走物語。男子二人のバディ・ロードムービーは愉快痛快。ファティ・アキン監督の作品はこれまでも佳作が多かったが、本作もひと際印象に残る作品となった。「愛より強く」「ソウル・キッチン」よりも本作が気に入った。 運転免許なんてもちろ…

パッセンジャー

宇宙空間の映像が素晴らしく美しいので、これを大画面で見ていたら、さぞやため息をついただろうと思うのが残念。 5000人のパッセンジャー(乗客)と乗務員を乗せた移民船は、120年をかけて移民星を目指し旅の途中にある。乗客乗員は120年間冬眠状態で過ごし…

アトミック・ブロンド

動物の中で、人だけが時間の概念を持つという。それはすなわち未来(死)を予測し、過去を振り返り、記憶と忘却とを繰り返す存在ということだ。 本作の舞台は一九八九年のベルリン。まさにベルリンの壁が崩壊するというその時に、東西国境を行きかうスパイが…

オン・ザ・ミルキー・ロード

巻頭いきなりの動物たちの喧騒は、「ああ、やっぱりクストリッツァ!」と思わせる。どこかわからないが山間の村で、豚が屠殺され、豚の血のバスタブにガチョウが飛び込み、血まみれガチョウにハエがたかり、、、と、あっという間に観客を映画の世界に驚きと…

エル ELLE

ちょっと期待値が高すぎた。 衝撃の問題作との触れ込みが強すぎたのだ。確かにかなりえぐい話ではあるが、衝撃というよりは、ヒロインの不可解な行動が最後までわたしには理解不能で、こんな女っているのかなぁとキツネにつままれたような気分だった。いや、…

マリアンヌ

正統派娯楽作と言うべきか、アクションありロマンスあり戦争の理不尽あり、という作品。演出も、時代設定や雰囲気も、実に古風だ。50年前の映画と言われても納得するような。しかし、そこにゼメキス監督は今の時代でなければできないようなカメラの妙を見せ…

エイリアン コヴェナント

「プロメテウス」に比べると面白さは落ちるが、それでも十分面白いのがこのシリーズのよさだ。うちのS次郎(24歳)が「今まで見た映画の中で一番好き。完璧な映画」と絶賛するのが「プロメテウス」。して、その続編はいかに。 結論から言うと、”期待通りに…

ダンケルク

クリストファー・ノーランの映像センスにはみじんも疑いがない。やはりこの人は映画ファンを喜ばせる映像を作るのがうまい。今作は映像だけではなく、音楽の効果も絶大であった。巻頭から大きな音や音楽で人を驚かせびびらせる、戦場の恐怖を観客に体感させ…

わたしは、ダニエル・ブレイク

簡潔で力強く、無駄なところがどこにもない、さすがにカンヌでパルムドールを獲っただけのことはある作品。地味すぎるのが難点か。 一時は引退を表明したケン・ローチがどうしても、とメガホンを取ったという。宮崎駿みたいですな。 かつては揺り籠から墓場…