吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

1987、ある闘いの真実

ソウル大生の拷問死という事実を基に描かれた、見ごたえたっぷりの社会派ドラマ。「タクシー運転手」も良かったが、この「1987」のほうが作品の完成度がはるかに高い。ただし、登場人物が多すぎて一回見ただけでは理解できなかった(酔っぱらっていたせ…

僕はイエス様が嫌い

22歳の学生監督が撮った作品がサンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を史上最年少で受賞したということでずいぶん前評判が高いようだ。 監督自身の体験を基にした伝記的な物語。それは東京から雪国に引っ越してきた小学生男子のひと冬の楽しく切ない…

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

愉快痛快、音楽も軽快。実に気持ちよく、そしておいしそうな映画だった。役者も豪華で、こんな「ちょっとした話」なのにこの配役! 羨ましいです。製作・監督・主演のジョン・ファヴローの人徳かな? で、そのジョン・ファブローはいかつい身体に似合わずた…

8年越しの花嫁 奇跡の実話

意外にもいい映画だった。期待を裏切らない、いやそれどころかそれ以上の出来。瀬々監督はこういう作品も撮れるんだなぁ、驚嘆と同時に改めて敬服した。土屋太鳳の演技力にも舌を巻いた。弾ける若さを見せていたかと思えば突然の病気、豹変する表情やしぐさ…

12か月の未来図

「僕たちは希望という名の列車に乗った」と同じ日に見た。これもまた秀作で、フランスの教育事情の一端を描いた多くの作品の中でもとても良い出来。ただし、数年前に話題になった「パリ20区 僕たちのクラス」を未見だったので、比べることができない。 フラ…

ドキュメント輪禍 むちうたれる者

5月に神戸映画資料館で労働組合映画特集が開催された。その折に見た作品。 映画を見ながらいろんなことを考え、思考があちこちに飛ぶという楽しい経験をした。映画に映し出されるのは50年前の大阪。登場するタクシードライバーや社長がコテコテの大阪弁なの…

トム・オブ・フィンランド

ゲイ・カルチャーの先駆者と呼ばれた、フィンランド出身の画家「トム・オブ・フィンランド」(本名トーコ・ラークソネン)の半生を描いた静かでかつ力強い映画。 第2次世界大戦が始まったころ、フィンランドでは対ソ戦争が起きていた。トーコが若いソ連兵を…

作兵衛さんと日本を掘る

ユネスコの世界記憶遺産に登録された山本作兵衛(1892-1984年)の炭鉱画とともに炭鉱労働から日本社会を照射するドキュメンタリー。さすがに6年という時間をかけて作られた作品だけのことはある。 この映画にはいくつかの驚きがある。一つはなんといっても、…

アマンダと僕

ある日突然愛する人を失う、ということはありえる話だ。事故、事件、突然死、さまざまな理由で人は逝く。だから、この映画の主人公、24歳のダヴィッドが愛する姉をテロ事件で突然喪っても、それは交通事故死などと同じことかもしれない。 テロが原因で肉親を…

Webサイト閉鎖のお知らせ

2019年6月末を以てeonetのサーバーに置いていたWebサイト「吟遊旅人」がなくなりました。プロバイダー契約を解除したのがその理由です。 「吟遊旅人」内に掲載していたコンテンツについてはいずれ時間のあるときに少しずつはてなblogに引っ越ししますが、い…

女王陛下のお気に入り

2月に見た映画。 斬新な映像感覚、研ぎ澄まされた音の効果、緊張と弛緩のほどよい交錯。三人の女の演技がぶつかる興奮。映画的興奮を味わわせてくれる、わたし好みの作品だ。 舞台は18世紀初頭のイングランド。この当時の国王であるアン女王のことはまったく…

僕たちは希望という名の列車に乗った

まだベルリンの壁が築かれる前の1956年に、東ドイツから西ドイツへ亡命した高校生たちの実話を基にした物語。原題は「静かな教室」。映画化を機に、原作となった主人公の手記が『沈黙する教室』と題して日本でも出版されることとなった。見終わって直ちに「…

バジュランギおじさんと小さな迷子

2月に見た映画。 主役のサルマーン・カーンは実年齢が50歳に近いから、若者の役をするのはかなり苦しいものがある。タイトルが「おじさん」だから、おじさん役なのかもしれないが、主人公のバジュランギは年齢不詳の若者おじさんである。 して、物語は。パ…

ブラックパンサー

タイトルを見たときに、てっきりマルコムX関連の話だと勘違いしていたが、本作は黒人帝国の王族たちの活躍を描くSF大作である。 アカデミー賞の美術賞と衣装デザイン賞を獲ったのも当然の、非常に印象深いコスチュームと美しいセットが楽しめる。そのうえ…

パパは奮闘中!

ある日突然幼な子二人を残して妻が失踪した。夫は突然の出来事に困惑しながらも、子育てに追われて孤軍奮闘。仕事人間だった彼は日常家事の何をどうしていいのかもわからず、懸命に子どもたちを育て、そしていなくなった妻の行方の手がかりを得ようとするが…

シシリアン・ゴースト・ストーリー

2月に見た映画。 事前情報をほとんど仕入れずに見に行ったので、「こんな話だったのか!」と驚いた。しかも実話を基にしているとのことなので、一層切なさが増していく。 ゴーストはつまり、殺された少年の魂のことで、彼は家を遠く離れた場所で監禁され、肉…

メアリーの総て

これも1月に見た映画。 怪物「フランケンシュタイン」を生んだのはわずか18歳の少女作家だった、というお話。悲劇に彩られたメアリー・シェリーの若き日々を描いた作品である。物語は暗く、フランケンシュタインという化け物が登場するにふさわしいゴシック…

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

これも1月にみた映画。既に大方忘れてしまっているが(汗)、いろいろ思い出しながら。。。 筋ジストロフィー患者が実名で登場する物語。映画の舞台は1994年から1年間の北海道。本人が実際に暮らしていた介護付き住宅を借りてロケしたという作品は、主役以下…

パッドマン 5億人の女性を救った男

1月に見た映画なので、今さらという感じだが、思い出しつつ感想を。見終わった当初はとっても感動していたのだが、数ヶ月経った今では、ラストの演説が強烈な印象を残した以外はほぼ詳細を忘れてしまっているのが情けない。 舞台はインド北部の郊外。主人公…

ハンターキラー 潜航せよ

アメリカの原子力潜水艦が主役となる大作映画だから、てっきりハリウッドものと思い込んでいたら、イギリス映画だった。確かに役者はイギリス人やヨーロッパからの配役が多い。 生涯決して乗りたくない乗り物の一つが潜水艦だが、どういうわけかわたしは潜水…

ヘヴンズ ストーリー

長い長い四時間半。わたしはiPadで小刻みに見てしまったから、映画の見方としては邪道に違いない。しかし、もしこれを劇場で見ていたとしても、長さは感じなかったのではないか。それほど、物語の強度が高く群像劇のアンサンブルが見事だ。ただし、個々の人…

ザ・ワーズ 盗まれた人生

てっきり原作小説があるのだと思い込んでいたが、そうではないと知って驚いた。こういう話を映画で、オリジナル脚本で作る蛮勇にまずは拍手。 劇中劇として語られる、「他人が書いた原稿を使って立身出世した新人小説家」という設定がそもそも原作小説がある…

ドント・ウォーリー

今となっては「政治的に正しくない」と批判されそうな風刺漫画を1980年代から描いていた漫画家、ジョン・キャラハンについて知っている日本人は少ないだろう。彼の作品を見ると、どこかで見たことのある懐かしさがこみあげてくる。ヘタウマと言えばいいのか…

主戦場

いまだに「論争」が続く「日本軍慰安婦問題」は捏造なのか事実なのか。疑問に思った日系アメリカ人の三十代の映像作家が肯定否定両派の人々にインタビューした記録がこのドキュメンタリーである。 その編集のスピーディなこと! 監督ミキ・デザキ本人による…

あなたはまだ帰ってこない

本作はマルグリット・デュラスの自伝小説を原作とする映画で、多くの出来事がほぼ事実であると思われる。1944年6月1日にゲシュタポに逮捕された夫ロベール・アンテルムの行方を知るためにゲシュタポ本部に日参する30歳のマルグリットの焦燥を描く。マルグリ…

リバプール、最後の恋

4月初めにこの映画と「あなたはまだ帰ってこない」を続けて見た。どちらも女性が主人公なので、女性観客が多かった。特にこの映画は高齢女性が目立っていたね。 観客が現実では経験できないことを女優は代わりに体現し、観客に悲喜劇を体感させてくる。そう…

心の旅

強引な訴訟指揮で負け知らずの辣腕弁護士ヘンリーが、突然の事件に巻き込まれて記憶喪失となり、身体機能も失ってしまう。必死のリハビリでなんとか日常生活を送れるようにはなったが、記憶はなかなか戻らない。と同時に、かつての仕事人間だった自分に疑問…

ウディ・アレンの6つの危ない物語

ウディ・アレンのテレビドラマは初めて見た。6話シリーズなのだが、二日がかりとはいえ、一気に見てしまった。最近では一番面白かったアレン作品。 時代は1970年、政治の季節のアメリカでは、ベトナム反戦運動が盛り上がっている。ウディ・アレンが演じる作…

トゥ・ウォーク・インビジブル

allcinemaにデータがないから、なんでだろうと訝しんでいたら、これはBBCのテレビドラマであったことが判明。しかしこんなに雄大な風景をテレビで見るなんてもったいない話だ。わたしはテレビどころかiPadで見てしまったから悔やまれる。もう一度あの風景の…

THE GUILTY/ギルティ

画面に登場する主要人物は主人公の警官たった一人。場面は警察署のコールセンターのみ。これほど金のかかっていない映画も珍しいだろう。舞台劇でも再現可能な物語だ。それでも、これほど緊迫感に溢れる映画が作れるということにまずは感動した。そして、な…