吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

運命は踊る

イスラエルに住む裕福な家庭のもとにある日突然軍の関係者がやってきて、「息子さんのヨナタンが昨夜亡くなりました」と告げる。その言葉を聞いた若く美しい母親は卒倒し、父親は冷静を装いながらも感情のやり場に困惑し、絶望に震える。だがそれは誤報であ…

愛と法

大阪で開業する弁護士夫夫(ふうふ)の日常を追ったドキュメンタリー。二人の名前はカズとフミ。二人で「なんもり法律事務所」を開業したのは2013年のこと。映画は2014年、性の多様性を祝福する「レインボーフェスタ」会場で派手なTシャツ姿の二人が壇上に上…

ドリーム

あふれる才能がありながら人種差別の壁にぶち当たって正当な評価も待遇も受けられなかった時代、黒人かつ女性という二重の差別の下にあった女性たちが自らの存在を認めさせるまでになる過程を描いた。 東西冷戦という時代背景があるから、アメリカとしてもソ…

僕たちの戦争

樹木希林さんを追悼して。映画ではなく、TBSで放送されたテレビドラマをご紹介。 2005年の茨城県在住のフリーターが、サーフィンの途中で溺れたはずみに1944年にタイムスリップし、予科練飛行士と入れ替わってしまうというコメディ。ドタバタコメディから始…

陸軍前橋飛行場 私たちの村も戦場だった

1940年1月から大量の日記をつけ続けていた人物がいた。その名は住谷修。そこには詳細に戦時下の村の様子がつづられ、軍によって強制的に田畑を徴収されたことも記録されていた。戦争の日々を冷静な目で描写するその筆致は時に辛辣で、村民への批判も容赦ない…

レッド・スパロー

これは4月の初めに見たので、詳細はほとんど忘れてしまったのだが、実はとても面白かったのだ。 東西冷戦が終わったはずの米露のスパイ合戦がリアルに見られる興味深い映画。原作者が元CIA工作員だからかだろう、細部がリアルで迫力がある。主人公はジェ…

ロスト・バケーション

よい子は一人で海へ遊びに行ってはいけません、という教訓話。 鮫ですよ、鮫。食われます、はい、約3名。誰が食べられちゃうのか、よーく画面を見ていましょうね。基本的に男はすぐ食べられて、女はなかなか食べられません。ごちそうは最後にゆっくり食べよ…

万引き家族

6月3日の先行ロードショーで見たのに続き、7月21日に2回目の鑑賞。二回目でさらに完成度の高さに脱帽した。この上いっそう余裕をもって観賞するためには三回見る必要がある映画だ。とはいえ、そんなにハードルを上げたらいけないいけない。一回の鑑賞でも十…

砂上の法廷

キアヌ・リーブズ、久しぶりにスマートでかっこいい役を演じております。今回は辣腕弁護士。地味な法廷劇で、あまり世評も芳しくなくひっそりと上映されて割とすぐに終わってしまったという印象があった作品だが、なかなか映画らしい演出がよかった。 さてス…

悲しみに、こんにちは

父母を亡くした六歳のフリダは叔父夫妻に引き取られるために都会のバルセロナから田舎へと引っ越す。巻頭のこの場面でフリダは言葉もなく荷造りの箱を見つめ、黙って車に乗り込んでいく。その深い悲しみを目元に湛え、彼女はいつも何かに耐えているような表…

BPM ビート・パー・ミニット

長男Y太郎に薦められて、4月に見た映画。しかしこれは日本ではヒットしないし評価もされないだろうと思った作品。カンヌ映画祭グランプリ受賞作だけれど、万人が共感をもって受け止める感動作ではない。そもそも日本では、活動家を「プロ市民」と呼ぶネトウ…

菊とギロチン

大正デカダンの時代、関東大震災直後の混乱した関東地方に女相撲の一座がやってきた。それを見た若きアナキストたちのグループ「ギロチン社」の一行は女相撲の虜になり、彼女たちと行動を共にしようとする。大正時代末期の猥雑でエネルギーにあふれた人々の…

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

王室ものというのはある意味手堅くヒットが狙えるから映画にしやすいんだろう。とりわけグレース・ケリーのようなシンデレラ物語となった美しすぎる女優・王妃の物語なら当然、絵になります。ニコール・キッドマンはかなり雰囲気が似ているし、背が高くてス…

最高の花婿

フランスって多国籍多民族の移民国家なんだとつくづく思う。だからこういう映画も作れちゃう。 田舎の豪邸に住むクロードとマリーの夫婦には才能にあふれた美しい娘が4人いて、みなパリに住んでいる。「娘たちをパリなんかにやったからよ」とマリーがこぼし…

バーフバリ 王の凱旋<完全版>

さすがに長いわー。エンタメ的にはこれ以上ないという無茶苦茶なサービスぶりだけれど、英雄としてバーフバリを称えれば称えるほど、だんだん虚しさが募ってくる。製作者の意図を超えて立派な反戦映画になっているではないですか!(んなわけないか) 前作の…

告白小説、その結末

次回作が書けなくてスランプに陥る女性作家のもとに熱烈なファンを自称する美しい女性が現れた。彼女の名前は「ELLE(彼女)」。エルもまたライターだ。ただし、エルはゴーストライターで、他人の自伝を書いているのだという。いつのまにかすっかり作家…

空飛ぶタイヤ

見ごたえのある企業犯罪追及社会派作品。主人公の中小企業社長が正義のために闘う姿よりも、大企業の末端で出世を狙いながらうまく立ち回る一癖ある正義派のほうが魅力的だ。 物語のもとになった事件は三菱自動車工業のリコール隠しであることは言を俟たない…

バーフバリ 伝説誕生

出たっ! B級超大作!! 興奮のるつぼと爆笑の嵐。歌って踊って大戦争。 なんでこれを観たかというと、現在劇場上映中の続編の完全版を観たいから、その予習のため。思いっきりCGとワイヤーアクションを使い、スローモーションを多用してあり得ない映像体験…

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

な、長い。何しろ登場人物が多いから、そのエピソード処理だけでもずいぶん時間がかかるのはしょうがない。で、お話は結構面白かったから長いけど退屈はしなかった。もう二週間以上前に見たのでまたしても細部はすっかり忘れたけど、エリザベス・オルセンの…

いつだってやめられる 7人の危ない教授たち

東京出張中に見た7作品の一つ。映画館で声をあげてこんなに笑ったのは久しぶりだよ。この続編を先に見たときには、前編を見なくてもだいたいわかるからえっか、と思ったが、やっぱり前作を見てないと面白み半減だわ! そうか、このパターンを踏襲するのね、…

gifted/ギフテッド

また一人天才子役が現れた。前歯の抜けたなんともいえない愛らしい顔に、長い睫毛を震わせながらくちゃくちゃの顔で笑う、抱きしめたくなるようなマッケナちゃん! 天才子役が天才少女を演じる。これはもう地でそのまま天才という雰囲気が全身から蒸発しまく…

リュミエール!

映画の原型であるシネマトグラフを生み出したリュミエール兄弟が残した1422本の作品から108本を厳選して解説を加えたもの。これがまた面白いったら。こんなに古い、ほんと、120年も昔の映像を見て何が面白いのかと思われそうだが、解説も含めて極めて興味深…

リップヴァンウィンクルの花嫁

黒木華の魅力がほぼすべて。よくぞ彼女を主役に据えたものだ、お見事。あ、すべてではない。残りの魅力はなんといっても怪しげな綾野剛。彼が演じる正体不明の安室という何でも屋、物腰柔らかな善人そうな詐欺師、彼が物語全体を不思議なムードに陥れている…

遺体 明日への十日間

ちょうどこの映画を観ていた時期に大阪で地震が起きたのでちょっとタイムリーだな、と妙な縁を感じたのだが、この映画は今回の大阪の地震の比ではない被害を描いている。 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県釜石市が舞台。 ただひたすら遺体と向き合う…

新感染 ファイナル・エクスプレス

数あるゾンビものの中でも出色の出来。走る列車の中でゾンビと闘うという究極のサバイバルぶりがサスペンスを盛り上げる。主人公はファイナンシャル・プランナーのソグ。小学生の娘を別居中の妻のもとに送り届けるために、ソウルから釜山行きの特急列車に乗…

ロープ/戦場の生命線

2月半ばに鑑賞。 1995年のバルカン半島を舞台に、戦争が終わった後も続く空しい戦後処理の活動をブラックユーモアたっぷりに描く怪作。どこかしらタノヴィッチ監督の「ノー・マンズ・ランド」に似た味わいがある。 「国境なき水と衛生管理団」って、なんの冗…

いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち

これは楽しい。三部作の第2作なので、第1作を見ていないことが返す返すも悔しいけれど、この第2作だけ見ても十分ストーリーは理解できる。仕事にあぶれた研究者たちが犯罪に手を染めて、その犯罪歴を帳消しにしてもらうために警察に協力する、というお話。ま…

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

ちょっと変わったタイムスリップもの。といっても、行けるのは過去だけで未来は無理。自分の経験がたどれるだけで、他人のは不可能なので過去に行ってヒトラーを暗殺できない。 で、何がいいかというと失敗を全部やりなおせるってことと、同じ本を何度も読め…

ゲティ家の身代金

大学院の授業の折に、INUE先生がヨーロピアナの解説をされていて、「ゲティ財団のおかげでヨーロピアナで日本の著作者を日本語で検索できる」とおっしゃった。その言葉聞いた瞬間に映画マニアの社会人院生IMNさんが目を輝かせて、「それはひょっとして『ゲテ…

セトウツミ

究極の脱力系コメディ。よくぞこんな作品を映画にしたもんだ。これ、お金払って劇場で見てたら怒るよね、ほんま。でも面白い。音楽がタンゴ、というところも人を食ったみたいで良い。 高校生が二人、暇を持て余して放課後の河原に座ってああでもないこうでも…