吟遊旅人ピピのシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。

人魚の眠る家

脳死状態になった6歳の少女の両親の葛藤を描き、人の死とは何かを考えさせる社会派作品。とはいえ、社会派にしては情緒的な作りなので、娯楽作として多くの観客を得られそうである。映画館では周囲の客がズルズルと鼻をすする音が聞こえ、わたしもハンカチを…

書評会:小杉亮子『東大闘争の語り―社会運動の予示と戦略』

当館エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)に恵投いただいた図書の書評会が開かれるので、お知らせします。以下、主催者からの案内文を転記します。 【社会運動史を学びほぐす―小杉亮子『東大闘争の語り―社会運動の予示と戦略』を読む】今年5月に刊行さ…

クワイエット・プレイス

声を出してはいけないという映画内のお約束のために、ずいぶん静かな映画なのだが、どっこい劇伴の音楽がものすごく怖くて、全然クワイエットじゃない! しかしまあ、あまりの緊張に見ているほうも息を詰めてしまうような映画だった。この映画が90分以内に収…

イコライザー2

前作はものすごく面白かったというのに、内容はきれいさっぱり忘れている。覚えていることは、デンゼルが強烈にかっこよい必殺仕事人で、クロエ・グレース・モリッツがまだ十代なのに既に中年体形になって貫禄ある二の腕を見せていたことぐらい。なので、前…

カメラを止めるな!

一つ空けて隣の席の若いおにいさんは巻頭のゾンビ映画の最中からずっと笑っていた。なんで笑うのかちょっとわからなかったわたし(マジこのゾンビ映画を怖いと思っていた)だが、後半第2部でわたしも思わず声を出して笑ってしまったので、きっとこのおにいさ…

ボディガード

午前十時の映画祭にて8月に鑑賞。 この映画を観るのは10回目ぐらいかもしれない。ビデオも買ったしサントラも持っている。ビデオ発売された時のCMの惹句は「これでケビンはわたしのもの…」と色っぽい声で女性がささやいていた。全日本のおばちゃんを狂喜さ…

ビューティフル・デイ

「レオン」のサイコファンタジー版とも呼ぶべき不思議な映画。もう四か月以上も前に見たからすっかり詳細は忘れたけれど、雰囲気だけは強烈に印象に残っている。 主人公ジョーは元軍人で、彼は戦場のトラウマと少年のころの家庭内暴力の記憶にさいなまれる日…

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛

時は17世紀、オランダはチューリップ・バブルに沸いていた。世界初のバブル景気として有名なチューリップの先物買いの高騰ぶりは過熱の上にも過熱し、球根1個が邸宅2軒分の値段で取引されたという。その時代はまた絵画もバブル状態で、裕福な多くのオランダ…

薄氷の殺人

ファム・ファタールもの。「薄氷の殺人」とはうまく題名をつけたもので、舞台は雪が積もる中国の地方都市、季節は冬。主人公たちは野外スケート場でたどたどしい足取りで滑走している。殺人はそのスケート靴にからんで起きる。 巻頭、ほとんどセリフがなくし…

ミッションインポッシブル フォールアウト

全編山場! 山場しかない。次から次へと山場! 観客が疲れ果ててごめんなさいもう許してというまで山場が襲ってくるという恐るべき映画。しかもほとんどのアクションスタントをトム・クルーズ自身が演じているというプロ根性にも脱帽。なんでそんなべらぼう…

マンマ・ミーア! ヒア・ウィ・ゴー

エンドクレジットの後に爆笑の1カットがあるのでお見逃しなく。 かつて世界中を熱狂させたアバ(ABBA)の楽曲だけを使ってミュージカルを作り上げるという神業の物語を八年前に見たときには、心底驚いたと同時に中高年の生き直し賛歌を楽しんだものだったが…

ラブストーリーズ コナーの涙 / エリーの愛情

幼児を亡くしたことによって関係が崩壊し別れていく一組の夫婦の悲しい物語。愛し合いながらも心が離れていくのを止めようがない。そんな二人をそれぞれの立場から描いた別々の作品として完成させている。 2作を1セットとして描くという試みはなかなか斬新だ…

春との旅

足を傷めて仕事ができなくなった老漁師が孫娘と一緒に旅に出る、というロードムービー。この老人がわがままで無教養でどうしようもない男だ。妻には先立たれ、娘にも死なれて孫の春と二人で北海道の寒村で生活していたが、その孫の勤務先である小学校が廃校…

さよなら、人類

「散歩する惑星」「愛おしき隣人」に続く三部作の最終作。さすがに同じような話も三回目になると飽きる。ただし、相変わらずの画面作りへのこだわりには感動した。窓に執着する監督は、ほぼ全画面で窓を構図の中心に配置してその窓を通して不思議な人間模様…

運命は踊る

イスラエルに住む裕福な家庭のもとにある日突然軍の関係者がやってきて、「息子さんのヨナタンが昨夜亡くなりました」と告げる。その言葉を聞いた若く美しい母親は卒倒し、父親は冷静を装いながらも感情のやり場に困惑し、絶望に震える。だがそれは誤報であ…

愛と法

大阪で開業する弁護士夫夫(ふうふ)の日常を追ったドキュメンタリー。二人の名前はカズとフミ。二人で「なんもり法律事務所」を開業したのは2013年のこと。映画は2014年、性の多様性を祝福する「レインボーフェスタ」会場で派手なTシャツ姿の二人が壇上に上…

ドリーム

あふれる才能がありながら人種差別の壁にぶち当たって正当な評価も待遇も受けられなかった時代、黒人かつ女性という二重の差別の下にあった女性たちが自らの存在を認めさせるまでになる過程を描いた。 東西冷戦という時代背景があるから、アメリカとしてもソ…

僕たちの戦争

樹木希林さんを追悼して。映画ではなく、TBSで放送されたテレビドラマをご紹介。 2005年の茨城県在住のフリーターが、サーフィンの途中で溺れたはずみに1944年にタイムスリップし、予科練飛行士と入れ替わってしまうというコメディ。ドタバタコメディから始…

陸軍前橋飛行場 私たちの村も戦場だった

1940年1月から大量の日記をつけ続けていた人物がいた。その名は住谷修。そこには詳細に戦時下の村の様子がつづられ、軍によって強制的に田畑を徴収されたことも記録されていた。戦争の日々を冷静な目で描写するその筆致は時に辛辣で、村民への批判も容赦ない…

レッド・スパロー

これは4月の初めに見たので、詳細はほとんど忘れてしまったのだが、実はとても面白かったのだ。 東西冷戦が終わったはずの米露のスパイ合戦がリアルに見られる興味深い映画。原作者が元CIA工作員だからかだろう、細部がリアルで迫力がある。主人公はジェ…

ロスト・バケーション

よい子は一人で海へ遊びに行ってはいけません、という教訓話。 鮫ですよ、鮫。食われます、はい、約3名。誰が食べられちゃうのか、よーく画面を見ていましょうね。基本的に男はすぐ食べられて、女はなかなか食べられません。ごちそうは最後にゆっくり食べよ…

万引き家族

6月3日の先行ロードショーで見たのに続き、7月21日に2回目の鑑賞。二回目でさらに完成度の高さに脱帽した。この上いっそう余裕をもって観賞するためには三回見る必要がある映画だ。とはいえ、そんなにハードルを上げたらいけないいけない。一回の鑑賞でも十…

砂上の法廷

キアヌ・リーブズ、久しぶりにスマートでかっこいい役を演じております。今回は辣腕弁護士。地味な法廷劇で、あまり世評も芳しくなくひっそりと上映されて割とすぐに終わってしまったという印象があった作品だが、なかなか映画らしい演出がよかった。 さてス…

悲しみに、こんにちは

父母を亡くした六歳のフリダは叔父夫妻に引き取られるために都会のバルセロナから田舎へと引っ越す。巻頭のこの場面でフリダは言葉もなく荷造りの箱を見つめ、黙って車に乗り込んでいく。その深い悲しみを目元に湛え、彼女はいつも何かに耐えているような表…

BPM ビート・パー・ミニット

長男Y太郎に薦められて、4月に見た映画。しかしこれは日本ではヒットしないし評価もされないだろうと思った作品。カンヌ映画祭グランプリ受賞作だけれど、万人が共感をもって受け止める感動作ではない。そもそも日本では、活動家を「プロ市民」と呼ぶネトウ…

菊とギロチン

大正デカダンの時代、関東大震災直後の混乱した関東地方に女相撲の一座がやってきた。それを見た若きアナキストたちのグループ「ギロチン社」の一行は女相撲の虜になり、彼女たちと行動を共にしようとする。大正時代末期の猥雑でエネルギーにあふれた人々の…

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

王室ものというのはある意味手堅くヒットが狙えるから映画にしやすいんだろう。とりわけグレース・ケリーのようなシンデレラ物語となった美しすぎる女優・王妃の物語なら当然、絵になります。ニコール・キッドマンはかなり雰囲気が似ているし、背が高くてス…

最高の花婿

フランスって多国籍多民族の移民国家なんだとつくづく思う。だからこういう映画も作れちゃう。 田舎の豪邸に住むクロードとマリーの夫婦には才能にあふれた美しい娘が4人いて、みなパリに住んでいる。「娘たちをパリなんかにやったからよ」とマリーがこぼし…

バーフバリ 王の凱旋<完全版>

さすがに長いわー。エンタメ的にはこれ以上ないという無茶苦茶なサービスぶりだけれど、英雄としてバーフバリを称えれば称えるほど、だんだん虚しさが募ってくる。製作者の意図を超えて立派な反戦映画になっているではないですか!(んなわけないか) 前作の…

告白小説、その結末

次回作が書けなくてスランプに陥る女性作家のもとに熱烈なファンを自称する美しい女性が現れた。彼女の名前は「ELLE(彼女)」。エルもまたライターだ。ただし、エルはゴーストライターで、他人の自伝を書いているのだという。いつのまにかすっかり作家…