(2012)
THE WORDS製作:ジム・ヤングほか脚本:ブライアン・クラグマン、リー・スターンサール撮影:アントニオ・カルヴァッシュ音楽:マーセロ・ザーヴォス
ドント・ウォーリー
(2018)
DON'T WORRY, HE WON'T GET FAR ON FOOTアメリカ
監督:ガス・ヴァン・サント脚本:ガス・ヴァン・サント出演:ホアキン・フェニックス
主戦場
いまだに「論争」が続く「日本軍慰安婦問題」は捏造なのか事実なのか。疑問に思った日系アメリカ人の三十代の映像作家が肯定否定両派の人々にインタビューした記録がこのドキュメンタリーである。
その編集のスピーディなこと! 監督ミキ・デザキ本人によるナレーションの面白さもあって、2時間をまったく飽きさせることがない。
マイケル・ムーア監督の突撃インタビューのような先入観に満ちた作品ではなく、きちんとした検証を行なおうとするデザキの真摯さが見て取れるところがこの作品の良さだ。
歴史家の間では大日本帝国軍が設置した慰安所があったことは周知の事実であり、「あったのかなかったのか」などという論争すら無意味であるとわたしなどは思っていたのだが、「日本人はほとんどこんな問題嘘だって思ってますよね。誰も今ではそんな強制連行なんて信じてませんよね、やりっこないよね、と」と述べる公人が存在するなら、この映画も存在意味があるというもの。その杉田議員は先ごろ「子どもをつくらない人は生産性がない」という発言で物議をかもしたところだ。
この映画では、右派と左派の人々に次々とインタビューをし、従軍慰安婦の強制連行があったのかなかったのか、彼女たちは「性奴隷」だったのかそれとも「高給売春婦」だったのか、その数は何人なのかをめぐって論じていく。
インタビューは一人ずつ行われているから、その論者たちが平場で論争するわけではないが、あたかもアリーナで論争を繰り広げるかのようなスリルのある編集によって、「主戦場」というタイトルにふさわしい出来となっている。
歴史修正主義者が「米国こそがこの歴史戦の主戦場だ」という言い方をして、「韓国人がアメリカを巻き込んで歴史を捏造している。慰安婦は性奴隷ではない」と非難しているのを知ったデザキが、この問題にきちんと取り組もうと考え、それまでのユーチューバーとしての作品ではなく、長編ドキュメンタリーとして製作することを決意しのが本作である。その資金はクラウドファンディングによって調達された。
画面に映し出されるのは、論拠と資料を提示して自分たちの主張を繰り広げる人々。あるいは、「その問題は複雑なので言いたくない」と目を伏せるインタビュイー。これは、単なるインタビュー集ではなく、語る人々のしゃべり方、視線、表情を見せる映像作品として成立している。
さらには、実写フィルムや他媒体からの借用・引用をちりばめ、エンタメ作品としても耐えうる品質を保持している。
この映画は特定の結論をあらかじめ用意していないし、最後まで「両論併記」の姿勢を崩さない。とはいえ、どちらの言っていることが「正しい」のか、どちらの主張に心を寄せることが社会を生きやすくするのか、訴えかける力がある。ぜひその目で見てその耳で聞いて確かめてほしい。
2018
SHUSENJO: THE MAIN BATTLEGROUND OF THE COMFORT WOMEN ISSUE122分
アメリカ
監督:ミキ・デザキ脚本:ミキ・デザキ撮影:ミキ・デザキ編集:ミキ・デザキ
あなたはまだ帰ってこない
本作はマルグリット・デュラスの自伝小説を原作とする映画で、多くの出来事がほぼ事実であると思われる。1944年6月1日にゲシュタポに逮捕された夫ロベール・アンテルムの行方を知るためにゲシュタポ本部に日参する30歳のマルグリットの焦燥を描く。マルグリットの苦悩がありありと観客に迫り、「痛み」(原題)が伝わる映画だ。
2017
LA DOULEUR126分
フランス/ベルギー/スイス
監督:エマニュエル・フィンケル原作:マルグリット・デュラス『苦悩』脚本本:エマニュエル・フィンケル
リバプール、最後の恋
4月初めにこの映画と「あなたはまだ帰ってこない」を続けて見た。どちらも女性が主人公なので、女性観客が多かった。特にこの映画は高齢女性が目立っていたね。
2017
FILM STARS DON'T DIE IN LIVERPOOL105分
イギリス
監督:ポール・マクギガン製作:バーバラ・ブロッコリ、コリン・ヴェインズ原作:ピーター・ターナー脚本:マット・グリーンハルシュ撮影:ウルスラ・ポンティコス音楽:J・ラルフ
心の旅
強引な訴訟指揮で負け知らずの辣腕弁護士ヘンリーが、突然の事件に巻き込まれて記憶喪失となり、身体機能も失ってしまう。必死のリハビリでなんとか日常生活を送れるようにはなったが、記憶はなかなか戻らない。と同時に、かつての仕事人間だった自分に疑問を感じるようになり、家族のきずなを取り戻すことをこれからの生き方として選んでいく。という、とても感動的な話なので、手放しでほめたいところだが、ちょっとひっかかる点も否めない。
ヘンリーは人格ごと変わってしまったわけで、それは「別人」ではないのか? そういう別人格を本当に愛せるのだろうか。人の生き直しの映画としては確かに感動的だが、過去の記憶すら失ってしまったヘンリーにとって生き直しが本人の自発的選択なのかどうかが気になる。それに、かつては本気で愛していたはずの愛人のことも忘れてしまうなんて、これもなんだか納得できない。妻より愛していた人がいたなら、その人と一緒になるのが自然のなりゆきのはず。
その妻役のアネット・ベニングが美しい。ハリソン・フォードの演技力にも感心した。渋くてとてもかっこいい。あまりにもかっこよかったので、翌日のわたしの夢にまで出てきてしまった。リハビリ療法士のビル・ナンがとてもいい役をもらって、これは美味しいところをさらった感じ。
いろいろ疑問に思うところはあれども、人生を生き直すという大きなテーマについては賛同できるし、ハンス・ジマーの音楽も美しいし、お気に入りの一作になりました。
そうそう、記憶をなくしても、匂いは憶えているんだね、これはよくわかる。(Amazonプライムビデオ)
(1991)
REGARDING HENRY脚本:ジェフリー・エイブラムス音楽:ハンス・ジマー
ウディ・アレンの6つの危ない物語
ウディ・アレンのテレビドラマは初めて見た。6話シリーズなのだが、二日がかりとはいえ、一気に見てしまった。最近では一番面白かったアレン作品。
(2016)
CRISIS IN SIX SCENES2017/03/24~
放映局:Amazonプライム・ビデオ
監督:ウディ・アレン製作:ヘレン・ロビン脚本:ウディ・アレン出演:ウディ・アレンエレイン・メイレイチェル・ブロズナハンジョン・マガロ